【学会成果発表報告】進行性運動失調症および肩のリハビリテーションに関する最新の知見を発信
- 2025/06/17
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リハビリテーション学部
― 第62回日本リハビリテーション医学会学術集会にてエキスパートセミナーを実施 ―
2025/06/12-14
2025年6月に京都で開催された第62回日本リハビリテーション医学会学術集会において、
四條畷学園大学リハビリテーション学部の松木明好教授および江村健児准教授が、それぞれエキスパートセミナーに登壇し、各専門分野における最新の知見を発表しました。
◆ エキスパートセミナー2-2
脊髄小脳変性症のリハビリテーション治療
登壇者:松木 明好 教授(理学療法学専攻)
松木教授は、協調運動障害や歩行障害、日常生活動作(ADL)の低下などを特徴とする脊髄小脳変性症(SCD)に対するリハビリテーション介入の有効性について、これまでの2つの系統的レビューおよびメタアナリシスの成果をもとに講演を行いました。
その中で、筋力強化、協調性運動、バランス訓練、有酸素運動、ADL訓練を組み合わせた多面的な理学療法プログラムや、非侵襲的脳刺激(経頭蓋磁気刺激・電気刺激)が、SCD患者の運動失調の重症度を示すSARAスコアの改善に寄与する可能性が示されたことを紹介しました。
さらに、リハビリテーションの効果を裏付けるエビデンスおよび国内外のガイドラインをもとに、今後の臨床展開における理学療法と非侵襲的介入の適用戦略についても議論を深めました。
◆ エキスパートセミナー14-1
肩のリハビリテーション診療の基礎となる解剖学
登壇者:江村 健児 准教授(理学療法学専攻)
江村准教授は、肩関節の障害評価・治療に不可欠な詳細な解剖学的理解の重要性について解説を行いました。
肩甲上腕関節のみならず、胸鎖関節・肩鎖関節を含む複合関節系の動きと安定性に関与する筋・靭帯構造を多角的に取り上げ、近年の研究成果を交えて、肩機能を正しく理解・診療するための基礎知識を共有しました。
たとえば、肩鎖関節の関節面形状が個人差を持つこと(Emura et al., 2014)や、鎖骨下筋から烏口突起に伸びる線維束の存在率が高いこと(Crepaz-Eger et al., 2022)など、臨床的意義の高い知見を提示。
これらの情報は、肩のリハビリテーションを行う上での診断精度や治療計画の質を高める指針となるものであり、参加者から高い関心を集めました。注意機能検査の新たなデジタル指標を提案。
― 第62回日本リハビリテーション医学会学術集会にて研究成果を発表 ―
2025/06/14
本学リハビリテーション学部の目片幸二郎 教授は、2025年6月に京都で開催された第62回日本リハビリテーション医学会学術集会において、「TMTの重要評価項目であるペン離し回数の自動計測」と題した研究成果をポスター発表し、また、東京都立大学およびナツメアタリ株式会社との産学連携による共同ブース展示も実施しました。
Trail Making Test(TMT)は、高次脳機能、特に注意機能を評価するための代表的検査法として広く用いられています。本研究では、同検査をiPad上で実施可能なアプリ「d-TMT」として開発し、特にペン離し回数の自動計測という新たな定量的指標の妥当性と有効性について検証を行いました。
2024年5月から7月にかけて急性期病棟に入院した脳疾患患者38名を対象とし、従来の目視カウントとd-TMTによる自動計測を比較。その結果、TMT-Aでは平均でd-TMTが3.39回、目視が1.29回、TMT-Bではd-TMTが7.28回、目視が3.00回と、有意な乖離が見られました。また、検査時間についてもTMT-Bにおいて約3割の症例で2秒以上の差が確認され、従来法の精度に限界があることが明らかとなりました。
本発表は、高次脳機能障害患者の社会復帰支援や高齢者の運転可否判断といった分野において、より正確で再現性のある注意機能評価指標の必要性に応えるものであり、d-TMTの活用が臨床現場における判断の質を高めることが期待されます。
さらに本学会では、東京都立大学、ナツメアタリ株式会社との共同研究の一環として、d-TMTの体験展示ブースを出展。実機を用いた来場者の体験や、医療とゲーム技術の融合によるUX(ユーザー体験)の提案が高い関心を集めました。
◆ 第62回日本リハビリテーション医学会学術集会(2025年6月/京都開催)
3名の先生方の発表は、それぞれの専門性を活かした学術的貢献であり、本学の教育・研究の質の高さを国内外に示すものとなりました。今後も本学では、学術発信と実践的知見の融合を進め、地域医療と国際リハビリテーションの架け橋となる人材育成に努めてまいります。
